漫才台本その15「男らしく」
ボ「もっと男らしくなりたいですね」
ツ「それな」
ボ「ちょっと練習させてよ」
ツ「いいよ。道端で悪い男の人に絡まれて、無理矢理連れてかれそうになって困ってる女の子がいて、そこに『ちょっと待った!その子から手を離せ!』って助けてあげるシチュエーションやってみない?」
ボ「男らしいね」
ツ「じゃあ俺、絡まれてる女の子やるわ」
ボ「じゃあ男らしくいくわ」
~
ツ「ちょっとやめてください、急いでるんで!離してください!」
ボ「ちょっとぐらい良いだろねぇちゃん!」
ツ「そっち!?そっちやんの!?男らしくなりたいんじゃないの?助けるほうやれよ」
ボ「こっちの方が男らしくない?」
ツ「助けるほうが男らしいわ!」
ボ「でも、助ける男って下心あるじゃん?どうせ助けた後に連絡先とか聞き出してあわよくばそっから仲良くなろうとしてんでしょ?」
ツ「偏見がすごいなぁ!絶対助けるほうが男らしいから。とりあえず助けに来い!」
~
ツ「ちょっとやめてください!離してください!」
ボ「・・・・・・ちょっとまっ!・・・・・・まっ!・・・・・・あのっ!・・・・・・あっ!・・・・・・ちょっ!」
ツ「縄跳び入れんやつか!なにリズムよくタイミングうかがってんだよ」
ボ「ちょっと止めに入るタイミング難しいわ。合図出してよ」
ツ「合図?」
ボ「入れるとこで、手叩きながら、はい!はい!はい!」
ツ「それ縄跳び入れん子のためにクラスメイトがやるやつ!すっと来いや!」
~
ツ「ちょっとやめてください!離してください!」
ボ「ちょっと待て!・・・・・・俺も混ぜろ!」
ツ「混ざってくんなや!なに止めてまで無理矢理混ざろうとしてんだよ!助けろよ!」
ボ「どうせ助けた後に連絡先とか聞き出してあわよくばそっから同じようなことするつもり――」
ツ「偏見はいいんだよ!いいから助けろ!」
~
ツ「ちょっとやめてください!離してください!」
ボ「ちょっと待て!・・・・・・あっちの子の方が可愛いぞ」
ツ「めちゃくちゃ失礼だな!他の子に被害がいくでしょうが。被害者を生みださないで。もっかいやるぞ」
~
ツ「ちょっとやめてください!離してください!」
ボ「ちょっと待て!その子から手を離せ!離さないと、こいつを撃つぞ!」
ツ「人質をとるな!小者臭いなぁ!」
ボ「こいつの方が可愛いぞ!」
ツ「そして失礼!正攻法で来い!」
~
ツ「ちょっとやめてください!離してください!」
ボ「ちょっと待て!その子から手を離せ!野郎ども!やっちまいな!」
ツ「数の暴力やめい!小者臭いんだよいちいち!一人で来い!」
~
ツ「ちょっとやめてください!離してください!」
ボ「ちょっと待て!その子から手を離せ!・・・なんだ?やんのかおらっ!ドカッバキッ!くそー!」
ツ「すごい!取っ組み合いの喧嘩をしている・・・!頑張ってー!」
ボ「くそぉ!このっ!早くその子から・・・手を離せー!」
ツ「離してなかったの!?でも今お前と取っ組み合いしてるじゃん!?手どうなってんの!?」
ボ「早くその!998本の手を離せー!」
ツ「千手観音だ!千手観音が絡んできてたんだ!?どういう状況だよ!なんで千手観音が来るんだよ!」
ボ「ったく!二度とこの子に絡むんじゃないぞ!あっち行け!」
ツ「追い払ってくれたんだ・・・ありがとうございます」
ボ「いやぁ~、しつこい宗教勧誘でしたね」
ツ「いや宗教勧誘には菩薩自ら出向かねぇよ!相手は人でやってくれ!神に歯向かわないで!」
~
ツ「ちょっとやめてください!離してください!」
ボ「ちょっと待った!その子から手を離せ!すみませーん、おまわりさんこっちですー!」
ツ「きゃっ!もう逃げちゃいました」
ボ「それはよかった。大丈夫でしたか?」
ツ「はい。助けていただいてありがとうございます。警官も呼んでいただいて」
ボ「はっはっは、警官は呼んでないよ」
ツ「え?」
ボ「(頭を指でとんとんと叩く)」
ツ「すごい!」
ボ「どこかでまたお会いしましょう!さよならっ!」
ツ「あ!待って!せめてお名前だけでも~!」
ボ「・・・はぁはぁ!すみません!警察です!」
ツ「え?警察!?さっきの人呼んでないって言ってたのに!」
ボ「もしやその人、私みたいな顔してませんでした?」
ツ「してました!」
ボ「そいつがル〇ンだぁ~!まぁ~てぇ~!」
ツ「なんだこの茶番はっ!!もういいよ」